小児科診療 Vol.84 No.12(2021年12月号)「書評」より

評者:大塚頌子(旭川荘療育・医療センター)

“Epileptic Syndromes in Infancy, Childhood and Adolescence”,通称「ブルーガイド」の第6版が2019年に出版され,このたび日本語版が刊行された.
ブルーガイドは1984年の初版後一貫しててんかん症候群を中心に記述されてきた.1989年の国際抗てんかん連盟による「てんかん,てんかん症候群および発作性関連障害の分類」の発表以来,てんかん分類においててんかん症候群が特に重視されるようになった.てんかん症候群はてんかんという広い夜空の中でそれぞれ独特の光を放ちながら存在する星座のようなものであり,我々は星座に導かれて宇宙を理解する手がかりを得ることができるといえる.
個々の患者の臨床像,脳波像,検査所見などの情報を吟味しながらてんかん症候群の診断に至るプロセスはてんかん診療の醍醐味であり,そのプロセスの道標としてブルーガイドはてんかん診療に携わる多くの医療従事者の身近に存在してきた.初版後35年の歳月を経て版を重ねるごとに時代に合わせて内容も充実し,第4版から発作ビデオ集も加わった.今回の第6版からはWEBでも閲覧できる.また,各てんかん症候群について,臨床像・脳波像に加えて病因に関る最新情報として遺伝子解析,画像検査の進歩を反映していることも特筆される.はじめの数章は総論に当てられ,その後主に年齢別にてんかん症候群が列記され,主要な文献も網羅されている.目当ての症候群を中心に読み込むとともに総論にも目を通していただきたい.
2007年の第4版から今回の第6版まで3回にわたり国立病院機構静岡てんかん・神経医療センターのスタッフが総力を挙げて日本語版の刊行に尽力された.センターにはてんかんに関連するすべての診療科が存在し,指揮をとられた井上有史先生をはじめとして皆さんが常に連携して活動されていることの成果が発揮されたと思われる.その成果を我々読者にも惜しみなく与えてくださったことに心から感謝したい.
本書がてんかん診療・研究に携わる人たちに大いに役立つことを確信する.